ホーム > なんこめ食通対談 > デザインから見る[なんばこめじるし]の“しるし”。
1 August 2007

[なんこめ]名付け親にして、自らも立ち飲みたこ焼き[たこやきらぼ]のオーナーとしてミナミに進出した放送作家・小山薫堂さんが、「なんばで仕事するなら!」と、ロゴや制作物のデザインを依頼した、アートディレクター細山田光宣さんと対談。[なんこめ]をデザインの観点から振り返りました。
なんば近辺にたくさん貼り出されている[こめじるし]のデザインには、いったいどんな想いが込められていたのでしょうか?
小山 細山田さんにはロゴマークをデザインしていただいたんですが、普通、デザイナーの仕事って施設と名前があってロゴを考えるじゃないですか。でも、今回は、[こめじるし]って形が決まっているわけで、すごくやりにくくなかったですか?
細山田 どこで味を出すかって言うのがありましたよね。[こめじるし]って分からなくちゃいけないけど、ダサくない「こめじるし」にしないといけないというのは、難しいですよね。はじめ和風を考えたんだけど、どこでもありそうになって。何かしら違うものを16個くらい考えました。デザインって正解がないじゃないですか。いつも自分としては1案が決定稿なんだけど、5案くらい作らなくちゃいけない。で、事前に写真とかはめてみて、できあがりをイメージすると、気がつくとメジャー感が出ているものがあります。
そこで、ちょっとシフトして、推してる案じゃないものにしたりとか。その辺は、デザイン性が高いとか高くないとかじゃなくて、そういう「光りかた」をしてきたら、これしかないよねっていうことですね。
小山 色でも、ずいぶんイメージが変わりますよね。
細山田 小山さんに「おいしい色を付けてくれ」って言われて。最初、僕は紺色がいいなと考えていて。和のイメージがあったので、それを脱却できなくて、紺かなと。でも小山さんに「おいしい色」って言われて、赤にしたら、あーなるほどと。当然、そうなんですけど。
小山 でも、今となっては、この赤が一番はまってますよね。
細山田 そうなんですよね!面白いですよね。
小山 あと、僕、よかったなと思うのが、[こめじるし]をお箸で挟んでいること。それを使った文庫本の装幀もすごくよかったな。
細山田 この写真、この為に相当こだわって撮りましたから。泊昭雄さん(※注)っていうフォトグラファーに依頼して。この方、自然光でとる写真家で、そのためのスタジオも決まっているみたいで、昼間しか撮らない、淡いというかほんといい感じなんです。
小山 へーーー!そうなんですか!すごい。そんな方に、箸だけ撮ってもらったんですか!(笑)
細山田 それも、普通のコンビニの割り箸!最近、料亭の箸というか、上等な割り箸とかあるじゃないですか。それだとカジュアルな雰囲気が出ないっていうことで、いろいろ試したんですけど。最終的に、結局コンビニのお箸で・・・。
小山 そう言われると、こう、お箸がものすごくきれいに見えてきますね!
細山田 印刷でも、この風合いを出すのに紙質にこだわりました。最初、違う紙で印刷したらうまく色がでないことがあって、泊さんの過去の作品をたくさん見たら、コート紙っていうのは、ひとつも使ってなくて。それはダメだなと思って、紙を代えてやりました。思ったより、この調整が大変でした。
小山 ところで、このロゴって全部、細山田さんが作ったんですよね?今まで気づかなかったんですけど、この[こめじるし]の角、微妙に丸めてありますね!
細山田 大きくなったときに、やっぱり粗さが出てくるのでちょっと丸めたりとか、よくロゴでもやるんですね。
小山 ロゴとかタイポグラフィー作りで、大切にしていることってどんなことですか?
細山田 ロゴでもタイポグラフィーでも、僕ら奇をてらうことはいくらでもできるんですけど、10年後に「あれ、やっちゃったよねー」っていうことが一番かっこ悪い。10年経った後にも、普通に使っているっていうか。10年と言わずもっと使って欲しいんですが。そのときのトレンドに流されてガーっとやっちゃって、数年後、あれはなーっていうのは恥ずかしいので、何年経っても使えるようにと考えました。
小山 細山田さんが、デザイナーの立場から、このロゴってすごいなーと思うのは、どういうロゴですか?
細山田 「FEDEX」とか、大好きなんですよ。あのロゴの中に、矢印が入っているんです。「E」と「X」のところに。そういう楽しみが入っているロゴ、デザイナーの贈り物ものみたいなものを入れられたら、すごいなーと思います。偶然の産物っていうのもあるんでしょうけど。そうやって、やっぱり長く使えるロゴが一番すごいんじゃないかなと思うんです。あと、ニュアンスがずっと残ってるもの。そういうものが優秀。
小山 車もそうですよね。車もBMWの新型といってもBMWらしさはきちんとあるし。話は変わって、細山田さんが[なんばこめじるし]に出店するならどんなお店?
細山田 僕ですか?バールみたいな店ですかね、欲しいのは。僕はフランスに行ってたとき思ったんですけど、飲食店って「街の財産」なんですよね。カフェが1個しかないような街だと、その親父さんが亡くなったりとかで廃業しそうになっても、誰かが引き継ぐような。レストランが2軒あったら、一軒が高くて一軒が安い。その場所に絶対必要だからあるっていう意味があるから、飲食ってなりたっているんだなって思ったんです。大阪とか東京って過当競争だから、そういうもんじゃないかもしれないけど、やっぱり僕ら大阪で10年後にこの店がもうない、みたいなことは絶対いやだし。お店も長くいるっていうことが、結構大事なんじゃないでしょうか。
小山 確かに、「街の財産」っていい言葉ですね。では、将来的に何かデザインしたい仕事っていうとどんなことですか?
細山田 僕は今、なぜか東京大学とかかかわっていて、それは印刷物中心なんですけど。学校って、グラフィックがほとんど入ってないんですよね。
東京大学は結構いい感じなのですが、一般的に先生ってデザインを見る目がない、というと怒られちゃいますけど、何て言うか代理店が入るような土壌じゃないから、なかなかグラフィックを選べるっていうことはできないと思うんです。だから、そういうところって面白いなと。何かできるんじゃないかなと思っていまして。それこそ、学内に本気で美味しいレストランがあるとか、そこが変わると、何か変わるんじゃないかな。
小山 なるほど、大学って面白いかもしれないですね、そう考えると。あーいいかも!うちも逆プレゼンしてみようかな!!行きたくなる学校。それだ!ありがとうございました。いいヒント頂きました。
(※注)
写真家・泊昭雄さん:スタイリストから転身。現在は、ANAの広告をはじめ、雑誌などを手掛ける写真家。雑誌「hinism(ヒニスム)」や、写真集「オモムロニ」「フクロウ」などを出版。

「なんばこめじるし」アートディレクター
細山田光宣さん プロフィール
「BRUTUS」誌のデザイナーを経て、「relax」誌創刊、「dish」創刊、「Seven」創刊、「ウフ.」誌創刊「another side」誌創刊にアートディレクションとして関わる。現在「POPEYE」、「web creator」「広告」「BOAO」「山と渓谷」「ウフ.」誌等がレギュラー。その他、「プチ哲学」「一食入魂」等書籍装丁多数。ロゴデザインに関しては、「ポパイ」ロゴリニューアル、「東京湾岸リハビリテーション病院」「J novel」「ウフ」「広告」「BOAO」等。